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腹膜播種センター

対象外:IPMN以外の膵臓、胃切除後の胃がん、胆道がん

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概要

腹腔内臓器と腹壁(お腹の壁)の内側を覆っている薄い膜を腹膜といいます。腹膜播種(ふくまくはしゅ)とはがんの腹膜への転移のことで、種が播かれたようにがん細胞が腹腔内に散らばっていることから命名されました。かつて腹膜播種はがんの終末期の状態であり、手術法はなく、全身化学療法で延命を図るほか治療法はなく予後不良であるとされてきました。

しかし、その臨床経過を見ると腹腔内以外への進展が意外に少ないことが分かっています。つまり、腹膜播種は局所の病気とも言えます。1995年にSugarbakerWashinton Cancer Institute)によって腹膜播種に対する腹膜切除を伴う完全減量手術(CRS: cytoreductive surgery)が報告されました。適切な症例を選択したうえで播種病変を切除する完全減量手術を行うと比較的良好な成績が得られることがわかってきました。欧米では腹膜播種患者の治療法の選択肢の一つとして確立され、治療ガイドラインでも専門施設での治療が推奨されています。しかしながら、日本でこの治療は限られた施設で細々と行われているのが現状であり、世界の先進国の中では最も遅れた国となっています。

当院では200712月に腹膜播種センターを設立しました。腹膜播種を伴う各種疾患に対して、腹膜播種関連の外科手術と全身化学療法、放射線治療などを含めた集学的治療を行っています。

診療実績

手術件数

累計 2,826件

2007年12月~2024年3月

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

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腹膜偽粘液腫 1,381 93 65 55 64 55
大腸がん 527 58 43 25 22 23
卵巣がん 145 4 8 5 4 5
腹膜がん 97 2 5 3 2 5
腹膜中皮腫 71 3 3 0 4 1
その他 503 20 20 18 16 14

腹膜偽粘液腫(ふくまくぎねんえきしゅ)

100万人に1人の割合で発生する、おなかの中にゼリー状の粘液物質が貯留するまれな疾患です。男女比は1:3と女性に多い疾患で、50から60歳代に好発しますが、20歳代の若者や高齢者での発症も見られます。この疾患は、腹腔内臓器にできた粘液産生腫瘍が増大して、自身の臓器の壁を突き破ることから発生します。90%以上は虫垂腫瘍が原因となりますが、卵巣や大腸、尿膜管、膵臓からの発生も見られます。

この疾患の特徴は、肺や脳、肝臓、リンパ節など他の部位への転移がほとんどみられないことです。また、胃がんや大腸がんなどの消化器がんに比べると比較的ゆっくりと進行します。従って、おなかの中の腫瘍を手術で完全に切除すれば、病気の治癒や長期の生存が期待できます。

図1:虫垂粘液嚢腫

図2:進行した腹膜偽粘液腫

腹膜偽粘液種は放置すると腸閉塞や腸管の破裂を引き起こします。今までの一般的治療の報告では5年生存率は20-50%程度とされています。当院では完全切除された患者さんの10年生存率は80%を超える成績を上げています。(図3)

図3:腹膜偽粘液腫患者 腹膜切除(CRS)後の生存率

大腸がん腹膜播種

大腸がんの腹膜播種は、大腸がん患者の10%程度に見られ、抗がん剤による通常の治療法での5年生存率は10%以下とされています。当院で大腸がん腹膜播種に対し切除可能と判断した場合には積極的に病変の切除を行っています。切除可能かどうかの判断をするため、CTやPET、審査腹腔鏡検査を受けていただく場合もあります。
当院で大腸がん腹膜播種の完全切除した患者さんの手術後7年生存率は40%でした(図4)。大腸がん腹膜播種の患者さんには術前術後に抗がん剤治療を併用しています。

図4:大腸がん腹膜播種患者 腫瘍残存率と腹膜切除(CRS)後の生存率

卵巣がん腹膜播種・腹膜がん

卵巣がんは婦人科疾患の中で最も死亡者数の多い疾患です。なかでも腹膜播種をきたした卵巣がんは予後が厳しいことが知られています。当院では、卵巣がんの患者さんに対して、CTやPET、審査腹腔鏡検査などで切除適応の判断をしています。患者さんによっては術前に全身の化学療法を受けていただき、病変の十分な減量を行ってから腹膜切除術を行う場合もあります。

腹膜がんは、組織学的に卵巣がんと同一である場合が多く、卵巣がん腹膜播種と同様の治療方針を取っています。

図5:卵巣がん腹膜播種と腹膜がん症例の腹膜切除後生存率

腹膜中皮腫

腹膜中皮腫はまれな疾患ですが、徐々に患者数の増加を認めています。腹膜中皮腫は胸膜中皮腫とは異なりアスベストとの関連は不明な場合も多く見られます。

腹膜中皮腫の治療には化学療法と外科的切除があります。完全切除可能な場合には外科的切除が選択されます。切除の可否は、CTPETなどの画像検査と場合により審査腹腔鏡で決定します。手術症例の3年と5年生存率はそれぞれ66%と53%となっています(図6)。

図6:腹膜中皮腫の術後生存率

当センターの特徴的な治療法

1)腹膜切除術(CRS)

腹膜播種の病変を切除するには腹膜切除という特殊な手技を必要とします。これは複数の臓器切除を伴う広範囲の腹膜を切除する方法で、手術手技のみならず術後の管理にも専門的な知識と経験が必要です。日本では数施設でおこなわれているのみです。

2)腹腔内抗がん剤投与(保険適応外のため自費診療になります)

腰椎麻酔または全身麻酔の手術で腹部に小切開を加え腹腔ポートを留置します。留置後、腹腔ポートからおなかの中(腹腔内)に抗がん剤を含む生理食塩水500mlの投与を行います。主に、胃がんや卵巣がん、腹膜がんの患者さんを対象としています。(当院では大腸がん、膵臓がん、胆道系のがんは適応外です。)
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腹腔内抗がん剤投与の特徴
腹腔内抗がん剤投与の副作用・合併症

お問い合せ・外来のご予約

腹膜播種センター外来予約の受付

TEL 077-563-8866(代)
月曜~金曜:午前10時~午後5時

 

外来担当
水本 明良 毎週月・金曜日
高尾 信行 毎週木曜日
今神 透 毎週金曜日

*外来予約受付の時間は必ずお守りください。
*紹介状が必要です。



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