音声・嚥下専門外来
嚥下障害に対する当科の取り組み
嚥下障害とは病気や疾患により「飲み込み」に障害が生じている状態です。当科では嚥下内視鏡検査や嚥下造影検査を行い、嚥下障害の病態を把握し、リハビリや手術などの治療を行っています。またNST嚥下チームとして病棟回診も行っています。嚥下内視鏡検査は年間500件近く実施しております。
嚥下に関する論文、学会招待講演も多く、経験豊富なメンバーで治療を行っています。
また、2020年5月から入院での嚥下評価(2週間限定)を行っています。ご希望の方はご相談下さい。
嚥下障害に対する手術
嚥下の手術には大きく二つあります。嚥下改善手術 と誤嚥防止手術です。
嚥下障害が軽度で術後リハビリテーションが可能な場合、音声が残せる嚥下改善手術を行います。
また嚥下障害が高度で、誤嚥を完全に防止したい場合、誤嚥防止手術を行っています。
どの手術を選択するかは、嚥下・呼吸能力を評価の上、本人やご家族と相談して決定しています。
最近10年間の業績
ご相談は下記までご連絡下さい。
著書・論文 (2010年以降・嚥下関係のみ)
- Evaluation of pharyngeal swallowing pressure using high-resolution manometry during transoral surgery for oropharyngeal cancer.K Fujiwara,S Koyama,K Taira,K Kawamoto,et al.J Laryngol Otol,2021
- 当院の誤嚥防止術における患者背景と治療効果.河本勝之,森谷李吉他. 滋賀医学,2020.
- 嚥下手術-誤嚥防止術と嚥下改善手術.河本勝之. 頭頸部外科,2019.
- 当科における経口的な内視鏡下輪状咽頭筋切除術.河本勝之、森谷李吉他.気管食道科学会,2019.
- 嚥下手術・私の手術ー喉頭挙上術・輪状咽頭筋切断術併施②.河本勝之. 嚥下医学,2019.
- Efficacy of fluoroscopy-guided endoscopic cricopharyngeal myotomy. Fujiwara K, Kawamoto K, et al. J Laryngol Otol. 2018.
- 嚥下障害の診断と治療-耳鼻咽喉科領域・嚥下手術-.河本勝之. 第28回日本気管食道科学会認定医大会テキスト,2018
- 高解像度マノメトリーを用いた嚥下機能評価.河本勝之. 医師薬出版株式会社、東京, 2018.
- A novel reflex cough testing device. K Fujiwara, K Kawamoto, et al. BMC Pulm Med,2017.
- 重症心身障害児(者)の医療的ケア-気管切開術・喉頭分離術の長期管理のポイント.河本勝之. 難病と在宅ケア,2017.
- 嚥下手術・私の術式-経口的輪状咽頭筋切断術.河本勝之. 嚥下医学,2015.
- Subglottic laryngeal closure; A unique modified methods of laryngeal separation to prevent aspiration.N Miyake, K Kawamoto, et al. Annals of ORL,2013.
- 嚥下障害がきっかけで診断され、急速な転帰をたどった癌性髄膜炎症例.河本勝之.嚥下医学1:112-119,2012.
- 化学放射線同時併用療法後の救済手術の現状と課題-有害事象への対応をいかに行うか-.河本勝之,北野博也. 耳鼻咽喉科・頭頸部外科,2010
国際学会発表,国内招待講演 (2010年以降・嚥下関係のみ.一般演題除く)
- パネルディスカッション・日本気管食道科学会:当院における多職種介入NST嚥下チームの取り組み―対象拾い上げの工夫とチーム医療.河本勝之.2021年
- シンポジウム・嚥下医学会:嚥下障害診療の社会還元.河本勝之.2019年
- 教育講演・頭頸部外科学会:嚥下障害の手術.河本勝之.2019年
- シンポジウム・嚥下医学会:嚥下障害の手術.河本勝之.2018年
- シンポジウム・気管食道科学会認定医大会:嚥下障害の診断と治療―嚥下手術.河本勝之.2018年
- ENT World Congress-IFOS, Paris, France:Immunohistochemical Study of pChAT in the Rat Larynx. K Kawamoto. 2017.
- パネルディスカッション・嚥下医学会:私の手術-誤嚥防止術、当科における誤嚥防止術.河本勝之.2017年
- 103 Congressio Nazionale SIO, Roma, Italy:Evaluation of Subglottic Laryngeal Closure for Prevent aspiration. K Kawamoto, et al. 2016
- 特別講演:神経筋疾患摂食嚥下栄養研究会:誤嚥防止術の適応と実際、術後の経過.河本勝之.2016年
- 教育講演・摂食嚥下リハビリテーション学会:誤嚥防止術の適応と効果.河本勝之.2014年
- シンポジウム・頭頸部癌学会:頭頸部癌治療後の嚥下障害に対する診断および対応-救済手術後の対応 河本勝之.2012年
- シンポジウム・頭頸部外科学会:化学放射線同時併用療法後の救済手術の現状と課題-有害事象への対応をいかに行うか.河本勝之.2010.
音声手術の例
甲状腺がんによる反回神経浸潤に対しては、摘出手術と同時に反回神経再建術を行います(図1)。反回神経を切断したままでは、声帯はやや開いた状態で固定し、時間と共に声帯の委縮が起こります。症状として、嗄声や嚥下障害(誤嚥)が生じ、声帯の委縮が進むと発声持続時間も短くなります。反回神経再建を行っても、声帯の可動を回復することはほぼありませんが、声帯が閉鎖位(声を出すときの位置)に固定すること、また声帯の委縮を防ぐ効果があります。通常数カ月後には、元の音声に近い状態に回復することが期待できます。
(図1)反回神経・食道浸潤例
術前より声帯麻痺あり
反回神経:神経移植(大耳介神経) 食道:筋層切除
しかし、肺がんや甲状腺がん手術で、反回神経が切断された状態が長期に及ぶ場合や、早急に嗄声の改善を望まれる場合には、当院では甲状軟骨形成術I型(図2)、披裂軟骨内転術(図3)を行っています。これらの手術は、声帯の閉鎖を補助する手術で、発声を楽にします。また食事のしにくさ(ムセ)を改善する効果もあります。手術は通常、局所麻酔で30分から1時間半程度です。患者さんの負担も軽く、がんで予後の不良な患者さんであっても施行可能です。
(図2)甲状軟骨形成Ⅰ型
声帯のすぐそばに詰め物をして、きちんと閉じられるように声帯を内側にむかって押します。
(図3)披裂軟骨内転術
声帯が閉じられるように、麻痺した声帯の軟骨に糸をかけて引きます。