嚥下障害とは病気や疾患により「飲み込み」に障害が生じている状態です。当科では嚥下内視鏡検査や嚥下造影検査を行い、嚥下障害の病態を把握し、リハビリや手術などの治療を行っています。またNST嚥下チームとして病棟回診も行っています。嚥下内視鏡検査は年間500件近く実施しております。
嚥下に関する論文、学会招待講演も多く、経験豊富なメンバーで治療を行っています。
嚥下の手術には大きく二つあります。嚥下改善手術 と誤嚥防止手術です。
嚥下障害が軽度で術後リハビリテーションが可能な場合、音声が残せる嚥下改善手術を行います。
また嚥下障害が高度で、誤嚥を完全に防止したい場合、誤嚥防止手術を行っています。
どの手術を選択するかは、嚥下・呼吸能力を評価の上、本人やご家族と相談して決定しています。
甲状腺がんによる反回神経浸潤に対しては、摘出手術と同時に反回神経再建術を行います(図1)。反回神経を切断したままでは、声帯はやや開いた状態で固定し、時間と共に声帯の委縮が起こります。症状として、嗄声や嚥下障害(誤嚥)が生じ、声帯の委縮が進むと発声持続時間も短くなります。反回神経再建を行っても、声帯の可動を回復することはほぼありませんが、声帯が閉鎖位(声を出すときの位置)に固定すること、また声帯の委縮を防ぐ効果があります。通常数カ月後には、元の音声に近い状態に回復することが期待できます。
しかし、肺がんや甲状腺がん手術で、反回神経が切断された状態が長期に及ぶ場合や、早急に嗄声の改善を望まれる場合には、当院では甲状軟骨形成術I型(図2)、披裂軟骨内転術(図3)を行っています。これらの手術は、声帯の閉鎖を補助する手術で、発声を楽にします。また食事のしにくさ(ムセ)を改善する効果もあります。手術は通常、局所麻酔で30分から1時間半程度です。患者さんの負担も軽く、がんで予後の不良な患者さんであっても施行可能です。